井田幸昌

井田幸昌アートブック

Concept

「大きい本の工房 hon ami」の最初の作品は、
現代アート作家・井田幸昌 のためにつくられる
世界に一つの大型アートブックです。

表紙、本文に何も印刷されていないこの巨大なスケッチブックは、
作家の筆が入ることにより、やがて唯一無二のアートピースへと生まれ変わります。
製本を手がけるのは、
ブックアーティストの太田泰友
大型であるがゆえに細部まで緻密な設計が必要なこのアートブックを、
丁寧に、丁寧に、手作りで完成させます。
この贅沢な営みの工程をご紹介しますので、是非お楽しみください。

Artist

井田幸昌

井田幸昌

1990年鳥取県生まれ。2019年東京藝術大学大学院油画修了。2016年現代芸術振興財団主催の「CAF賞」にて審査員特別賞受賞。2017年レオナルド・ディカプリオ財団主催のチャリティオークションに史上最年少参加。2018年Forbes JAPAN主催「30 UNDER 30 JAPAN」に選出。
2021年にはDiorとのコラボレーションを発表するなど多角的に活動。制作は絵画のみにとどまらず、彫刻や版画にも取り組み、国内外で発表を続けている。

造本監修

太田泰友

太田泰友

太田泰友

太田泰友 (おおた やすとも)
1988年生まれ。ブックアーティスト。OTAブックアート代表。2017年、日本人初となるドイツにおけるブックアートの最高学位マイスターシューラー号を取得。同年、「OTAブックアート」を設立。2023年、森林環境保全とアートを融合するプロジェクト「林業芸術社」をスタート。これまでハーバード・ライブラリー、ドイツ国立図書館、うらわ美術館など国内外の美術館、図書館、アートギャラリーに多数収蔵されている。

Production Note


Session1

400ページにもなる「YUKIMASA IDA ART BOOK」。
まずは本文を糸で綴じていく工程から
スタートします。

太田泰友

B1より一回り大きいサイズの本文用紙を4枚ずつ、
丁寧に折っていきます。
とにかく大きいので、取り出すだけでも大変です。
この折を25束つくり、糸で綴じていくのです。

折って、綴じる

大型本は壊れやすいので
繊細な作業が必要。
外見では分からない細部まで、
意匠を凝らしていきます。

太田泰友

太田泰友

そして糸かがりへ。
折った紙の山の部分に穴を開け、
丁寧に丁寧に糸を通して
いきます。

太田泰友

太田泰友

糸で綴じられながら、
折の束が少しずつ積みあがっていきます。
糸かがりの完成まで、あともう少し!

太田泰友

太田泰友

太田泰友

全部で25の折の山がきれいに糸で綴じられました! 
無事に最初の工程が終了です。

背を固める

Session2

糸で綴じられた400ページの本文。
いよいよ、
背の部分を固める作業に入ります。

太田泰友

太田泰友

本文の束を木の板で挟み込み、
固定します。
大きくて重たいので、
少しの
移動にも神経を使います。

太田泰友

太田泰友

木の板に重しを載せて、
取り出したのはでんぷん糊。
刷毛を使って、何重にも背に
糊を塗布していきます。

太田泰友

太田泰友

でんぷん糊をならしながら、
背中を整えていきます。
さらにその上からボンドを
塗布して
強度を上げていきます。

太田泰友

太田泰友

背固めの完成! 
重しを載せたまま、しっかりと乾かします。

Session3

太田泰友

綴じが終わったら、
本の三方を裁って本文用紙を美しく揃えます。
今回は埼玉の栄久堂様にご協力いただきました。
切る寸法を間違えたら大変です、
慎重に断裁機へ。

太田泰友

無事きれいに断裁され、
美しい仕上がりとなりました!

裁つ

背に施す

太田泰友

固めた本文の背に、
様々な仕掛けや装飾を施していきます。
まずはボンドを何重にも塗布するところから。

ボンドがしっかりと塗られた背に、
寒冷紗と呼ばれる薄い布を
補強のために貼り付けます。

太田泰友

太田泰友

続いて
「花布(はなぎれ)」の装飾。
かつては強度を出すための
ものでしたが、
現在は装飾目的で
上製本の天地に付けられています。

太田泰友

太田泰友

続いて、本文がスムーズに開閉するように
「クータ」と呼ばれる
筒状の仕掛けを施します。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

これでついに本文の背の部分が完成しました!

切って、削る

Session4

製本の舞台はついに屋外へ。
表紙の芯材となる
木材の加工が始まります。

太田泰友

太田泰友

しっかりと固定して、
丸のこで裁断!

太田泰友

太田泰友

カンナで周囲を化粧して、
表紙クロスへの負担を軽減するために
角を削ります。

太田泰友

太田泰友

3枚の板の加工を丁寧に仕上げて、
表紙の芯材の完成です!

ついに表紙の制作へ。

太田泰友

貼って、合わせる

まずは背と表紙2枚をつなぎ合わせて、
本文とのバランスを確認していきます。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

太田泰友

微妙なズレを確認。
数値通りにはなかなかうまくいきません。
再度貼り直して、調整します。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

微調整完了です!

表紙の芯材にボンドを
まんべんなく
塗っていき、
クロス素材を貼りこんでいきます。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

細部まで丁寧にクロス素材を貼り込み、
だいぶ表紙の形が出来上がってきました。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

太田泰友

一体にする

Session5

いよいよ製本は最終段階へ。
表紙と本文を接合させます。

太田泰友

まずは表紙と本文の背の部分を
貼り付けます。
両者をしっかりと固定する
準備を。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

太田泰友

表紙の背の内側と
本文の背の外側に、
まんべんなくボンドを
塗っていきます。

太田泰友

太田泰友

表紙と本文の背を貼り合わせて、
しばらく固定します!

太田泰友

太田泰友

太田泰友

背が固定され、いよいよ完成間近!
そしてここからは
写真家・清水隆史さんの撮影です!

太田泰友

仕上げる

表紙と本文の接続を
さらに強固にしていきます。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

太田泰友

見返しと呼ばれる2枚の紙を、
表紙の裏側に貼り付けます。
まずは1枚目。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

いよいよ最後の工程。
奥付が印刷された見返しを
貼る作業へ。
20kg近い重量の本を
慎重に支えます。

太田泰友

太田泰友

太田泰友

貼り付け完了!
太田さんがサインを入れます。

太田泰友

長い長い工程を経て、
ついに世界に一つの大型スケッチブックが
完成しました!

太田泰友

作品情報

”完成作品”

『YUKIMASA IDA ART BOOK』


©hon_ami